岡山地方裁判所 昭和43年(行ウ)2号 判決 1968年10月30日
原告 竹中武
被告 岡山税務署長
訴訟代理人 山田二郎 外三名
主文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 <省略>
理由
まず、被告の本案前の抗弁につき判断する。
本訴は、岡山税務署長の更正処分の取消を求めるものであるから、右処分の取消を求めて、原告が、広島国税局長に対してなした審査請求の裁決があつたことを、原告が知つた後、三ケ月以内に訴を提起しない時は、もはやこれを提起し得ない事は、行政事件訴訟法第一四条の規程上明らかである。ところで<証拠省略>によれば、前記載決書謄本は、昭和四二年一〇月九日広島中央郵便局より書留便で発送され同月一一日原告方へ岡山郵便局より配達されたことが認められる。原告は、右日時頃は刑務所に服役中で、裁決の事実を知り得なかつたものと再抗弁するので、この点につき判断するに、当裁判所が、昭和四三年五月二一日岡山刑務所長にあて調査を嘱託した結果によると、原告は右日時頃、岡山刑務所に服役中であつたが、昭和四二年一〇月一三日同人の妻である竹中春江および姉である竹中富久子と同刑務所において面会した事実が認めちれる。そして、原告が金融を業とする者であり、昭和四〇年度分右事業よりの所得として一五〇万円と確定申告したのに対し、被告が右申告の約倍額にあたる二八〇万三、〇九五円とする旨更正処分をなしたので、原告は被告に対し異議申立をなしたところ棄却されたため、さらに広島国税局長に対し審査請求をなしたことは当事者間に争いがない。したがつて、右審査請求の結果については、原告本人のみならず同人の親族たる右両名も少なからぬ関心を有していたことは当然推測されるところであり、しかも右面会の日時は前記裁決書謄本が原告方へ配達された翌々日であることを考え合わせると、特に反対の証明がない限り右両名は面会の際前記裁決のあつた事実を原告に報告し、原告はこれを知るに至つたと推認するのが相当である。
しかるに、本訴が提起されたのは、昭和四三年二月一四日であることは、訴状に押捺されてある受付印で明白であり、原告が前記裁決のあつたことを知つた昭和四二年一〇月一三日から、すでに四ケ月余を経過しているから、本訴は、行政事件訴訟法所定の出訴期間を徒過した不適法の訴として却下を免れない。
よつて、訴訟費用につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 五十部一夫 金田智行 大沼容之)